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アンコンシャス・バイアスとは?組織への弊害事例とセルフチェックシート

2020.06.21

アンコンシャス・バイアスとは「無意識の思い込み」

職場や社外で「アンコンシャス・バイアス」という言葉を耳にした、または他者から言われたという人が増えています。

アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)とは「無意識の思い込み」や「無意識の偏見」。アンコンシャス=無意識、バイアス=先入観や固定概念や思い込みの意味。例としては以下のような意識が該当します。

  • 女性は子どもができたら退職するもの
  • 飲み会の幹事は新入社員がすべき
  • 遅刻は事情に関わらず許されないもの

無意識の思い込み自体は、物事を迅速に判断し、日常生活を円滑に進めるプラスの面もあります。良かれと思った善意による発言や行動が、相手によっては悪く捉えられることもあり、ある程度は仕方のないことです。

アンコンシャスバイアスとは

そしてアンコンシャス・バイアスは、多かれ少なかれ、誰しもが持っているもの。心の病や精神障害のように捉えがちですが、決して邪魔もの扱いすべきものではありません。

しかし、アンコンシャス・バイアスが働くと、組織においてネガティブな要素が生まれることが多いのも事実です。

  • チームの生産性が落ちる
  • ミスが起こりやすくなる
  • 組織全体の空気が悪くなる
  • 社員のモチベーションが上がらない
  • 互いに意見を言い合えなくなる
  • ハラスメントが生まれる

これらはアンコンシャス・バイアスの影響のごく一部。さらに踏み込んで詳しい性質や弊害を見ていきましょう。

アンコンシャス・バイアスの正体は「自己防衛」

アンコンシャス・バイアスが問題となり得るのは、その正体が「自己防衛」だからです。

・自分を正当化するエゴ
・それまでの習慣や常識を変えたくない

新しい概念は今までの自分を否定される気がし、「自分の考え・やり方は間違っていない」と自分を正当化しようとするエゴイズムや、今まで正しいと思い込んできたものを否定されたくないと、自分にとって都合のいい解釈をしてしまうなど、新しいことを受けれいる重圧から逃れようとする自己防衛がアンコンシャス・バイアス。

その結果、新しい価値観や周りの変化を認めようとせず、同調圧力をかけるなどの対人関係で弊害が起きます。

アンコンシャスバイアスの原因は自己防衛

何よりアンコンシャス・バイアスがやっかいな点は、アンコンシャス・バイアスを持っていることに自分では気づきにくい、または気づこうとても、気づけない点。

無意識による些細な行動や癖(マイクロメッセージ)が相組織の対人関係の悪化や成長のストップを招きかねないのです。アンコンシャス・バイアスは自分で偏見がないつもりでも、心のブラインド・スポットに潜んでいます。

今この記事を読んでいる方も

  • 人に優しくしたいのに必要以上にキツく注意してしまう
  • 先に事情を聞くべきなのに、ついカッとなって叱ってしまう
  • 部下や同僚をもっと愛せる気持ちのいい職場を作りたい

上のようなさまざまな悩みを抱えているのではないでしょうか。

アンコンシャス・バイアスが注目された背景

現在、アンコンシャス・バイアスが世の中で問題視され、改善への取り組みが増えているのは良い傾向と言えるでしょう。

そもそもアンコンシャス・バイアスは2010年代頃から注目を集めるようになりました。組織の多様化(非正社員・女性・外国人・LGBTQ+などの増加)が背景にあります。

不祥事やハラスメントなどが相次いで起こり、企業倫理の問い直しが強く求められ、特に組織のリーダーや管理職はアンコンシャス・バイアスへの注意が必要とされてきました。

Googleも2013年5月から「アンコンシャス・バイアス」と名づけた教育活動を開始しています。また、医療法人、学校法人、NGO、自治体などもアンコンシャス・バイアストレーニングに取り組んでおり、今ではアンコンシャス・バイアスは、トレーニングや研修のことを指す場合もあります。

「差別や偏見が間違っていることは分かっているのに、いざ組織内でトラブルを起こしてしまう。どうしても上から押しつけてしまう」といった悩みは、リーダーや管理職に就く方に多い傾向です。

アンコンシャス・バイアスは個人の問題であることはもちろん、組織全体で意識することも大切。無意識の思い込み・偏見の存在や特徴を理解し、お互いが振り回わされないチームになることも重要です。

アンコンシャス・バイアスが組織に引き起こす弊害の事例

種類内容
正常性バイアス周りが危機的状況になったとしても、都合の悪い情報は見ようとせず「自分は大丈夫だ」と思い込む
集団同調性バイアス他の人もやっているから間違っていないだろうと思い込む
権威バイアス社長や役員など偉い人が言うことは間違いないと思い込む
確証バイアス自分の仮説や信念を支持する情報ばかりを集め、反対意見の情報を無視または集めようとしない
アインシュテルング効果慣れ親しんだ考え方や見方に固執し、他の視点に気づかない、または他者の意見を無視する

次に、無意識の思い込みが組織にどんな弊害をもたらすのか、行動としてのアンコンシャス・バイアスを見ていきましょう。一口にアンコンシャス・バイアスと言っても、その種類は150以上あると言われています。

上の表は組織内で弊害を起こすリスクのあるアンコンシャス・バイアスの種類。これらの思い込みや偏見が働くと、「決めつけ」「押しつけ」といったハラスメント的な行動に発展します。

正常性バイアス:組織で起きている危機に気づかない

正常性バイアスは、周りが危険な状況になっていても都合の悪い情報は見ようとせず、「自分は大丈夫だ」と思い込むこと。危機的状況が目の前に迫っていても対応が遅れてしまうリスクがあります。

  • 成果が出ているときしか進捗を確認しない
  • できないことに目をふせ、できることばかり考える
  • 組織内の対人関係でトラブルが起きていることに気づかない
  • 社員が辞職したい空気になっているのに見て見ぬふりをする

上のような場合でも、目先の業務に追われ、広い視野を持って将来に備えることができなくなっていきます。

他人の過ちや他社の不祥事などを目にしたとき「自分は大丈夫だ」という思考になっていないか思い返してください。

集団同調性バイアス:活発な議論が出にくくなる

集団同調性バイアスは、他の人もやっているから間違っていないだろうと思い込むこと。周りに同調しようとうする傾向や同調圧力が強まり、「もっとこうすれば良いのではないか」「みんなが賛成しているけど、その考えは違うのでは?」と考えていても、意見せずに周囲に合わせようとします。

  • 多くの賛成意見があるものは正しい
  • 自分の意見は少数派だから間違っている

このような空気が蔓延すると、多角的な視点で物事をみる機会が失われ、組織にとっての有益な議論が生まれにくくなります。集団同調性バイアスは、組織としての成長に関わってきます。意思決定はすべて多数決にしていませんか? 少数意見=間違いという思考になっていないか思い返してください。

権威バイアス:社員の成長機会を奪う、モチベーションを下げる

権威バイアスは、社長や役員など偉い人が言うことは間違いないと思い込むこと。

  • 組織のグレードを優先して意見を採用する
  • 組織にとって有益かもしれない意見を潰してしまう

社員の成長機会やモチベーションが下がることはもちろん、組織全体の推進力を奪うことにつながります。役員と新入社員で意見が食い違ったとき、中身を吟味しないで役員の意見を採用していませんか? 意思決定者を設けることは大切ですが、きちんと出された意見に耳を傾けているか思い返してください。

確証バイアス:採用や人事において、本人の実力が正しく評価されない

確証バイアスは、自分が感覚的にいいと思った意見に合わせてデータを集めてしまうこと。自分の考えを肯定する情報は参考にするが、否定する情報は無視することです。

  • 小さな子どもがいる女性社員は出張仕事はしない方がいいと思い、それを裏付けるためのデータを集める
  • 子供が小さいうちは、母親は子育てに専念すべきという考えに固執し、その理屈だけを並べる
  • 外国人の労働者は営業や接客業を任せないほうがいいと思い込み、肯定する意見だけを集め、反証する意見は無視する

このような固定観念や思い込み、決めつけにつながります。本人のやる気や事情も聞かずに仕事を割り当てていませんか? 社員の成長機会を奪い、実力が正しく評価されないリスクがあります。

アインシュテルング効果:組織に挑戦する文化が生まれない

アインシュテルング効果は、慣れ親しんだ考え方や見方に固執し、他の視点に気づかない、または他者の意見を無視すること。

  • 良いアイデアでも過去の成功事例がないと採用しない
  • これまで成功しているから変化は必要ないと決めつける

せっかくの良案が排除されてしまう、ステレオタイプの作業をこなすだけで仕事がマンネリ化するなどの弊害につながります。

その他にも、「遅刻=やる気がない」という思い込みから、なぜ遅刻したのか事情を聞かず、頭ごなしに叱りつけるなどの行動につながります。

 以上、紹介したアンコンシャス・バイアスの種類はごく一例にすぎません。特にリーダーや管理職にいる人は、自分の考えを押しつけてしまう傾向にあり、部下とトラブルに発展しやすくなります。

これらのアンコンシャス・バイアスは負の連鎖が起きるリスクがあり、やがてはハラスメントの告発やブランドイメージの失墜など、組織が社会的信用を失うこともありるため注意してください。

アンコンシャス・バイアスを確かめるチェックリスト

次に、自分がアンコンシャス・バイアスを持っているか確かめる15のチェックリストを紹介します。

当てはまる項目はいくつある?チェック
上司は部下よりも優秀でなければならないと考えている✔︎
「これまでのやり方」や「前例」に固執している部分がある✔︎
相手の性格を血液型で判断することがある✔︎
「それは常識だ」「普通は〇〇だろう」をよく使う✔︎
「〇〇すべき」「〇〇でなければいけない」が口癖だ✔︎
飲み会の幹事は若手が担当することが多い✔︎
「なぜこんなことも理解できないんだ」と部下に感じることが多い✔︎
「自分の意見は受け入れてもらえない」と遠慮がちになる✔︎
役員や部長と部下の板挟みになっていると感じる。✔︎
世代や出身地などで、何かを判断することが多い✔︎
中途入社・派遣社員・非正社員の人たちとコミュニケーションが少ない✔︎
お酒が飲めない社員は付き合いが悪いと思う✔︎
「女性だから〇〇」という思考になることがある✔︎
事務的な仕事は、男性より女性に依頼しがちである✔︎
育休取得や定時退社をする社員は、仕事の意欲が低いと思う✔︎

該当する項目はあったでしょうか? 項目に該当するから悪い、自分は危険だというわけではありません。組織の社風や接する相手によって善し悪しは変わるでしょう。

「若く見えるね」と褒めたつもりでも、相手によっては「未熟と思われた」など、マイナスの印象を受けとってしまうかもしれません。これから紹介するチェックリストも、あくまでアンコンシャス・バイアスを自覚するためのヒントとして捉えてください。

アンコンシャス・バイアストレーニングのポイント

最後に、アンコンシャス・バイアスによる弊害を少なくするトレーニングにおけるポイントを解説します。

アンコンシャス・バイアスのトレーニング

多くの企業が実施しているアンコンシャス・バイアストレーニングを行うことによって、下記のような効果が期待できます。

  • ハラスメントの防止
  • 多様な社員の能力が安定的に発揮される
  • リーダー・管理職のマネジメント力の向上
  • 採用率の向上・離職率の低下

アンコンシャス・バイアストレーニングの先にあるものは、多様な人々がそれぞれの能力を発揮できる「ダイバシティの推進」

組織にとってのマイナス要素を軽減することも目的ですが、ポジティブなものとしても捉えるといいでしょう。

アンコンシャス・バイアストレーニングは他者の存在がキーポイント

アンコンシャス・バイアストレーニングは主に3つのステップがあります。

  1. 無意識の偏見の存在を認識
  2. 自身のアンコンシャス・バイアスと少しずつ向き合う
  3. 相手の偏見も認識し、少しずつ寄り添う

トレーニングとしては以下のような種類があります。

  • 重要な事項は勝手に決めないで、本人に聞いてみる
  • 錦の違いが生まれたとき、お互いの”当たり前”が違った部分を振り返る
  • 相手が負の感情を覚えたら撤回して謝罪する

この他にも対策はあるものの、アンコンシャス・バイアスは人それぞれ違い、習慣づいてしまっているので実践を通じて少しずつ改善していく必要があります。本での独学など自己トレーニングで改善は難しいでしょう。なぜなら、アンコンシャス・バイアスの改善には、自分を客観視・俯瞰して見る「メタ認知」や「他者からのフィードバック」が重要だからです。

また、個人の意識改革はもちろん、組織の仕組みを変革することも同時に大切。アンコンシャス・バイアスは自分一人だけでなく、リーダーや管理職など組織で取り組むことを意識してみましょう。

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