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アサーティブ・コミュケーションのトレーニング方法【誰でもできる】

2020.06.12

我慢せずに主張できるアサーション

正直に言って相手を傷つけるか、言わずに自分が我慢するか、というコミュニケーションの課題は部下をもつリーダーやマネージャーが良くぶつかる問題です。
そんな時に、正直に伝えるが、両者共に納得できる話し方ができるアサーティブ・コミュニケーションというものがおすすめです。

アサーティブ・コミュニケーション、アサーティブネス、アサーションなど似たような言葉があるので簡単に定義を説明します。

アサーション(アサーティブネス・アサーティブ)

これらは同じ意味で使われます。
アサーション(Assertion)ないし、アサーティブ(Assertive)とは、相手も自分も尊重しながら情報や意見を伝えるコミュニケーションスキルのことです。感情をそのままぶつけるのではなく、感情を押し殺すのでもなく、相手に配慮しながら自分の気持ちを正当に主張することで組織の活性化を促します。
アサーティブネス、アサーティブ・コミュニケーションも同義で使われます。

アサーティブのトレーニング

アサーティブ・トレーニングとは、うまく自己主張ができない行動パターンを練習によって変え、自他尊重な行動の増加や認知の習得をすることが目的です。コミュニケーションというのは、性格に紐づけられてしまったり、もしくは逆に、上部だけのスキルと捉えられてしまうことがあります。
しかし実際には、アサーションの考え方とアサーティブ・コミュニケーションのトレーニングを繰り返しを行うことで、アサーションの知識とスキルを習得し、今までとは違う態度・行動を取ることが可能となります。

アサーションで組織を活性化し、チームのパフォーマンスを高める

高圧的な指導

厳しい言葉が通用しなくなってきた現代

近年、管理職やマネージャーに求められる役割が変化しています。競争が激化する中で、上司から与えられたチームの目標の達成と部下の育成を同時に求められるようになったからです。それは同時に、管理職の役割の重要性と負担も比例して大きくしています。

このような状況の中、部下の育成を頑張ろうと思っている管理職やマネージャーほどうまくいかないケースが見られます。特に、自分自身が上司から厳しい指導を受けて、その指導に耐えて成果を上げてきたタイプの人は部下への指導も厳しくなる傾向が見られます。このようなタイプの人は、仕事への意欲が感じられない部下(自分と違うタイプの人)に対して厳しい言葉や高圧的な態度で接し方をしてしまうこと多いのではないでしょうか。

自分と同じように仕事への意欲が高いと感じられる部下や社員の場合、厳しい指導や要求を前向き捉えて、あなたが求める以上の頑張りを見せてくれることもあります。しかし、働き方が多様になってきた現代では、仕事への意欲が感じられない部下や社員もいます。厳しい指導や要求は、萎縮や反発を招き、本来の力を発揮することの妨げになります。一時的には頑張りを見せてくれることもありますが、持続的な組織の活性化にはつながりません。

コミュニケーションのプロとして、誰とでも良好な人間関係を築く

管理職やマネージャーは、コミュニケーションのプロである必要があります。プロとして、少なくとも仕事の上では誰とでも良好な人間関係を築くことが求められます。アサーティブ・トレーニングで練習を積むことで、アサーティブなコミュニケーションの知識とスキルを習得し、今までとは違う態度、行動パターンを身につけましょう。

会社への貢献こそが最大の成果

業績向上

管理職のアサーティブ・コミュニケーションは、会社の業績向上や従業員満足度(Employee Satisfaction)の向上につながります。会社の要であるあなたが、アサーティブなコミュニケーションができることで、

  • 人間関係に安心感が生まれ、職場の雰囲気が良くなる
  • 会社への連帯感が高まり、従業員の主体性が生まれる
  • 社員の働くモチベーションが上がり、生産性が向上する
  • 作業時間の減少(人的リソースが減る)
  • プロジェクトの早い達成(時間的なリソースを確保する)
  • 組織が活性化し、売上や利益が向上する

組織を活性化し、パフォーマンスを高めることこそ、アサーティブ・トレーニングを学ぶことの最大のメリットと言えます。

グーグルの研究チームも「心理的安全性(チームの中で自分の思ったことを自由に発言しても不利益を被らないと感じられる状態)を高めると、チームのパフォーマンスと創造性が向上する」ことを発見した報告をしています。

で早速、明日からすぐにでも実践できそうな方法を4つ紹介します。できそうだと思うものから試してみてください。

|具体的なトレーニング方法4選

トレーニング1 アイメッセージ【主体性を自然に引き出す】

1つ目のアサーティブ・トレーニングは、文章を自分を主語にするアイメッセージです。
アイメッセージを身に付けることで、厳しい言葉を使わなくても、主体的に相手を動かすことができるようになります。

アイ(I)メッセージ

アイ(I)メッセージとは、「私メッセージ」とも言います。「私」を主語にして,自分自身がどう感じているかという思いを伝えます。

ユー(You)メッセージ

反対に、ユー(You)メッセージもあります。ユー(You)メッセージとは、「あなたメッセージ」とも言います。「あなた」で始まるか,「あなた」がどこかに入っている話し方のことで、相手の考え方を否定や非難するような印象を与えることが多いため、「相手をやっつける話し方」に受け取られやすいです。「あいつは何回言っても変わらない」「あいつは俺の言っていることを全然理解してくれない」と愚痴をこぼしている人の多くは、このユー(You)メッセージを使っています。

Q.部下が大切な資料を見つけられない場合、あなたはどのように注意しますか?

「お前はいつもだらしがない!大切な書類なんだから、しっかり保管しておいてくれ!」

これは、ユー(You)メッセージです。

お前はいつもだらしがない!大切な書類なんだから、(あなたが)しっかり保管しておいてくれ!」

このように言われた部下は命令されたと感じてしまい、萎縮してしまうか、「今は忙しいから、後で落ち着いてからやろうと思ってたのに!」などと反発する可能性もあります。人は、他人から否定されたり、批判されたりするのを嫌う生き物です。相手のことを思って注意したものの、ユー(You)メッセージで伝えてしまうと、関係性が悪化していく可能性は高いです。

では、アイ(I)メッセージに変えてみます。

「お客様の大切な書類だから、しっかり保管しておいてくれると、私は安心できるんだよな。」

どうでしょうか?このようにアイ(I)メッセージにすると、あくまでも自分の気持ちや感情を述べているだけですし、命令をしているわけではないので、相手に選択権を与えることができます。そのままにしておいてもよいですし、片づけてもいいし、相手次第です。高圧的な言葉や態度をしなくても、多くの人が片づけようと思うはずです。

いかがでしょうか?主語を変えるだけで伝え方が変わり、相手への伝わり方は大きく変わりました。これ以外でも、時間にルーズな部下や言われたことしかやらない社員に対してなど、さまざまな人に対して使うことができます。どうしたら相手が主体的に動いてくれるようになるのかを意識して使ってみましょう。

また、アイ(I)メッセージのデメリットとユー(You)メッセージを使うときと注意することもお伝えします。

アイ(I)メッセージを使う時に注意すること

アイ(I)メッセージにも、デメリットがあります。それは、回りくどい言い方になることです。人によっては、回りくどい言い方を好まない人もいます。
関係性がしっかりしている相手には直接的な言葉も入れてみるといいでしょう。

ユー(You)メッセージを使うときと注意すること

コンプライアンス違反や会社の信用を著しく失うようなことした場合には、ユー(You)メッセージを使い厳しく指導します。違反をした本人の為でもありますが、チームとしての規律を保つためです。ただし、注意しなければならないのは、相手の人格や存在まで否定しないことです。行為を指摘することは大切ですが、相手の人格や存在までを否定してしまうと、信頼関係を大きく損ねてしまいます。さらにメンタル不調により休職の原因になったり、パワハラで訴えられたともなれば、会社にとって大きな損失になります。うまく使いこなせるようになりましょう。

トレーニング2 裏メッセージ【頑張らせないことで、頑張っていることを認める】

裏メッセージとは、言葉の裏に貼り付いている意味のことで、自己有用感が低いタイプの人に使うと効果があります。

自己有用感の低い部下に対して「どうしたんだ。最近元気ないじゃないか。あとちょっと頑張れよ!」と伝えると「頑張っていないから、頑張れと言っているんだな。」と裏メッセージを受け取られることがあります。

反対に、「頑張りすぎているから、これ以上はやらなくてもいいよ。後はやっておくからここまでできたらすぐに帰りなさい。」と伝えると「制限をかけられるくらい頑張っていると思ってくれている。」と頑張りを認めているという裏メッセージを与えることができます。

裏メッセージを理解し使いこなすことで、厳しい指導や高圧的な態度をすることなく、相手の気持ちを上手に動かすことができます。

トレーニング3 DESC法【合理的解決のための道筋を整備する】

DESC法は、合理的解決のための道筋を整備する方法と言えます。相手に対して感情的に伝えるのではなく、自分の感情を論理的に伝えるために必要な要素を体系的にまとめた理論です。部下が寝坊したときやトラブルが続いたときなど、感情的になりがちな場合に有効です。

DESC法を用いることで、本質的な問題の解決につながり、ミスやトラブルなどの再発防止にも効果があります。以下は、自分の感情を論理的に伝えるためのプロセスを4つに分解したものです。

D:Describe(描写する)
客観的に状況・事実を伝える

E:Express(表現する)
自分の意見や感情を表現する

S:Specify(提案する)
相手に求めているものを言葉で伝える

C:Consequences(結果を伝える)
提案したものの実行/不実行による結果を伝える

例:部下が打ち合わせに遅刻した場合

「20分遅刻したけど(D:描写する)、何かあったのか?」
「すみません、寝坊してしまって。」
「連絡がなくて心配したし、他の予定にも響くから困るよ。(E:表現する)」
「申し訳ありません。以後気をつけます。」
「次からは、遅れることが分かった時点でどのくらい遅れるのかも併せて連絡をするといいね。(S:提案する)どれくらい遅れるのかが分かれば、こちらで調整ができるし、ミスを最小で食い止められるからね。(C:結果を伝える)」

この会話のポイントは、具体的に何をすればいいかをはっきりさせているところです。

「何が起こり」「どう問題が生じ」「どうすれば解消され」「それでどのようになるのか」

具体性を持たせることで、相手に理解や納得を促すことができます。

ミスやトラブルの原因や背景まで理解する

信頼される上司になりたいのであれば、遅刻の理由である寝坊の原因まで掘り下げます。寝坊の理由が、単に夜更かしであれば注意するだけでも良いですが、前日に遅くまで残業をしていたり、もしかすると親の介護のことや仕事の悩みを抱えて寝不足になっていたりするかもしれません。ミスやトラブルを表面的に捉えるだけでなく、その原因や背景まで理解する姿勢が、信頼関係を築く土台になります。人に知られたくない悩みもあるので、声を掛けるタイミングや場所には配慮しましょう。

トレーニング4 上司に対しては、新たな提案や代替案

上司から急な仕事を頼まれたが、自分の仕事で一杯いっぱいで断りたい時もあります。「今は忙しいのでできません!」とすぐに断ることで自分は良いですが、わざわざあなたに仕事を依頼をした上司の気持ちは大切にできていません。また、だからと言って「はい、分かりました。」と引き受けてしまえば、仕事の量が多すぎて、質が落ちてしまったり、自分だけでなく部下の負担も増えてしまいます。これは、自分の気持ちを大切にできていません。

そういった場合は、新たな提案や代替案を提示します。「明日提出しなければならない企画書があるので今は難しいのですが、明後日から取り組んでもいいでしょうか?」といったような代替案を提案する形で、相手の気持ちも大切にしつつ、自分の気持ちを伝えることができます。これなら言われた上司も今の状況を理解してもらえたり、その解決策や代替案を一緒に考えてくれたりもします。

ただし、最適な伝え方/コミュニケーションに正解はありません。状況によっては、代替案を提案するよりも自分が引き受けた方がよいこともあります。一番重要なのは、現状の問題を理解して、その解決のためには何が必要で、そこで発生するメリットデメリットはどんなものなのか、それらを一度頭の中で考えた状態であることです。

1.問題点に気付く(相手の状況と自分の状況の把握が大切)
2.何が原因?
3.どうしたら解消できる?
4.そのために何が必要?
5.何が足りていて、何が足りていない?
6.いくつかの現実的な選択肢を思い浮かべ、それぞれのメリットとデメリットを想像する

アサーティブなコミュニケーションができるということは、問題に関しての現状把握とおおよその着地点を理解しているということです。この後どうするかの相談をしても、お互いに論点をわかっているので結果として話が円滑に進み、早く答えにたどり着くことができるからです。

|まとめ

アサーティブ・トレーニングにより、今までとは違う態度、行動パターンを身につけられそうでしょうか?コミュニケーションのプロとしての意識を高め、アサーティブ・トレーニングのよって相手に配慮しながらも自分の気持ちを正当に主張できるよいリーダーを目指しましょう。