あなたはイクボス?【リーダーとしてチームに対してできること】
2020.06.06
イクボスとは部下と自分のワークライフバランスの取れる上司のこと
最近よく聞くようになった、イクボスという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
厚生労働省によるイクボスの定義は、以下です。
「部下や同僚等の育児や介護・ワークライフバランス等に配慮・理解のある上司」のことです。
厚生労働省
実は、この言葉だけだと誤解を生んでしまいそうなので、もう少し正確に説明すると、
イクボスとは、部下、チームメンバーと自分自身のワークライフバランスや社外での学習をサポートしながら、チームや組織の目標を達成し、事業を成長させる上司のことを指します。
イクボスは元々は育ボスと言われていましたが、最近ではイクボスという表記が一般的になっています。
要するに、イクボスとは、仕事・プライベートの目標をバランスよく達成させるマネジメントスキルを持っているリーダー(プロジェクトリーダー・管理職・経営者)のことになります。
似ている言葉として、イクメンがありますが、これは育児をする男性のことですので、関係としてはイクメンを増やすために社内にイクボスが必要となります。
少子高齢化社会において、一人ひとりが、社会における生産性の向上と子供たちの成長をサポートする必要が出てきたという背景でより重要となったキーワードになります。
プライベートが充実している人の方が、業務への集中力も高くなるので、そういった人材の獲得や育成を目指す組織にとって、イクボスは非常に重要な要素となっています。
また、在宅勤務などを導入している職場では、プライベートと仕事の棲み分けが難しくなります。
そのような中「会社はその人の仕事だけを考えていればいい」となってしまうと、当の本人への負担が大きくなり、結果会社への業績反映も小さくなってしまいますので、今後多くの組織がイクボスという概念を意識する必要に迫られています。
イクボスへの取り組み事例
では、実際にどのようなイクボスへの取り組みがあるのでしょうか。
国や自治体の取り組みは啓発がメイン
国や自治体の組織自体でもそうですが、企業に対してイクボスの育成を呼びかける目的も含んで取り組んでいます。
例えば、厚生労働省では”「日本総イクボス宣言プロジェクト!!”と題し大臣や企業からイクボス宣言を収集し、掲載しています。
イクボス宣言とは、組織のリーダーがまずはイクボスとなり、組織としてもイクボスの育成に取り組むことをそれぞれの言葉で表明することです。
また、各自治体でも個別で取り組んでおり、東京都は東京都産業労働局がTOKYO働き方宣言企業と題し呼びかけています。
企業がイクボスへ取り組むメリット
イクボスへの取り組みの企業の例としては、損害保険ジャパン日本興亜などの銀行、イオンなどのスーパー、その他銀行やガス企業など個人の生活を支える業種から始まりました。
その動きは、少しずつ広がり、現在ではアクセンチュアなどのコンサルティング企業やプログラミング学習企業など様々な企業が取り組まれています。
企業がイクボスに取り組むメリットとしては、以下が挙げられます。
- 短期的には、その表明することによる採用率の向上
- 長期的には、離職率の低下や組織のリーダーシップの育成、生産性の向上など
イクボスへの取り組み方2種類ある
では実際、イクボスへはどのように取り組めば良いでしょうか。
イクボスへの取り組み方には大きく分けて以下の2つがあります。
- 組織としての取り組み
- 上司個人としての取り組み
組織としての取り組みが必須となるような内容としては、現在の就業規則を見返さなければいけないような大きな取り組みにはますが、いちリーダーとしてして個人でもイクボスとして振る舞えるシーンは多くあると思いますので、ぜひ両方を参考にしてください。
組織としての取り組み
組織としてできることは、進むべき方角を示し、そのための道を作ることです。
1. イクボス宣言
組織で取り組む場合、まずはイクボス宣言を社内外に向けてすることから始めていきます。
イクボス宣言の内容としては、組織が従業員をどう扱っていくか、そしてそのために何を取り組んでいくか、ということを一定の抽象度を保ちながら表明していく必要があります。
その際に、気をつけなければいけないことは、イクボス宣言の内容と会社理念やミッションとの整合性やそれがどう会社や事業の発展へ繋がっていくのかという箇所です。
宣言が一定の説得力を持つためにも頻繁に変更することは望ましくありませんので、一度イクボスの全体像を理解した上で、作り上げていくと良いでしょう。
2. 仕組みづくり
それに加え、運用を行っていく必要があるので、宣言に紐づいた仕組みづくりも必要です。
仕組みづくりで良くある失敗としては、とりあえず良さそうな制度を導入することです。
まず、イクボスの仕組みづくりとは制度だけではないので、より包括的に考えていく必要があります。
また、制度を導入するにしても、欲しい人材がここで能力を発揮するために必要な制度を導入する必要があります。ではないと、結果的に期待とは違う制度を目的とした人が多くなってしまう、ということもあるからです。
仕組みに関しても、どういう人に活躍してもらいたく、その人達が働けない理由がどこにあるのかを一度整理すると良いでしょう。
個人としての取り組み
上司がイクボスとして、個人的にできることとしては、現状の制度の活用率の最大化と業務のフォローアップがあります。
1. 使える制度を教えてあげる
会社の就業規則や福利厚生というのを把握していない従業員は意外と多いものです。
従業員は、最初から制度を把握してからやれることを探すのではなく、やりたい/すべき事ができてから始めて制度が必要になるからです。
また、制度の変更が多かったり、多くの制度は1人が何回も使うものではないため、把握しきれないということもあります。
そんな時、上司が制度を熟知していれば部下がやりたいことをフォローアップできる内容をピックアップしてサポートすることができます。
従業員が悩んでいたり、相談されたら、制度の活用で解決できることはないだろうかと、一度考えてみてください。
2. 業務のフォローアップ
これはイクボスというより、ボスとして当たり前のことでは…?と感じた方もいるのではないでしょうか。
しかし、直属の上司として部下にできる一番必要なことは、部下の生産性の向上です。
部下が毎日2時間残業して行っている業務を残業30分にまで縮める事ができれば、1.5時間は仕事以外の時間に使えるようになるので、これこそが、会社の生産量も下げず、個人の生産性をあげる、イクボスとしてできる一番基本かつ一番重要な役割となります。
部下の業務の遂行を客観的に把握し、タイムマネジメントや優先順位のつけ方など、スキルを提供し部下の生産性を向上させてください。
イクボスとNOTイクボスの組織の違い
イクボスであるかどうかは目の前の部下のやる気や離職率だけではなく、組織的な課題を生み出します。
現場の従業員には、自分のプライベートが組織の業績に繋げっていることを認知していないケースも少なくありません。
上司がイクボスとして振舞い、仕事の効率をあげ、プライベートを充実でき、組織へ還元できるという構造を一度確認しましょう。
あなたのイクボスレベルをチェックしよう
イクボスを目指すにあたり、自分のイクボスレベルを認識することは差分が見えるのでとても重要です。イクボス10か条という、自身がイクボスかどうか判断できるものがあります。
しかし、イクボスという概念ができた時に作られたもので、少し抽象的な部分が多いため、より現場の状況に落とし込んだもので判断しましょう。
イクボス実践チェックリスト
当てはまる項目はいくつある? | チェック |
---|---|
自分のプライベートを大切にした行動を取れている | ✔︎ |
部下へプライベートの時間を確保するよう口頭で伝えている | ✔︎ |
残業時間が長いと評価が上りやすいなどの基準がない | ✔︎ |
プライベートの過ごし方に指摘をしていない | ✔︎ |
育休などのライフワークバランスのための社内制度を把握している | ✔︎ |
部下に社内制度の取得を呼びかけている | ✔︎ |
管轄部署の人がライフを尊重されていると認識している | ✔︎ |
労働時間の短縮を目的とした生産性向上に取り組んでいる | ✔︎ |
既存の方法をデジタル化するなど、積極的に働き方に関するテクノロジーを活用している | ✔︎ |
あなたの上司や人事部などに、現場の状況を伝え改善させることがある | ✔︎ |
イクボスの組織がそうでない組織と比べ業績をあげていることを社内で認識している | ✔︎ |
11個中、いくつ当てはまりましたか?
- 9個以上当てはまる:あなたはイクボスです
- 7個以上当てはまる:足りない部分を認識し、行動すればイクボスになれます
- 5個以上当てはまる:焦らず、1つずつ問題を解決し+2つを目指しましょう
- 4個以下当てはまる:もしかすると、部下は何か悩んでいるかもしれません、一度ちゃんと話を聞いてみましょう
今日から実践できるイクボストレーニング
完璧を目指すのは難しいものです。
まずは少しでもイクボスになれるように今日からできる簡単なスキルを紹介します。
1. 制度がどれほど周知されているか確認
社内のライフ充実制度を読み返し、メンバーがどれだけ知っているか簡単な匿名アンケートをしてみましょう。この時、匿名でアンケートを取る事が重要です。なぜなら、匿名でアンケートを取ることにより、そのあと全体に改めて制度を伝えることになるので、全体周知ができるからです。
これが個人個人で伝えてしまうと、今後も運用が難しかったり、分かっていると答えたが分かっていない人を拾えなくなってしまうので、必ず匿名アンケートにしましょう。
制度を振り返る、アンケートを取る、全体に伝える、これででもうイクボスへの第一歩は完了です。
2. 部下のプライベートな状況を把握する
部下にサポートをしようとしても、把握できていなければ適切なサポートはできません。
まずは、部下の最寄りの駅や通勤時間、一緒に住んでいる家族構成などを把握しましょう。
そうすることで、例えば、小学四年生で習い事をしていることを知っていれば、お迎えが必要な事が分かったりなど配慮する事が可能になります。
まずは、イクボスとして部下のライフを簡単に把握しましょう。また、話してくれる人の話はメモするなど取っておくようにしましょう。
3. コーチング/アサーションなどを利用し部下との関係を良くする
部下が自分の課題に気づく、部下に伝えるべきことをしっかり伝えるなど組織として重要になるが、実行が難しいことに関しては、コミュニケーションスキルを習得し活用するのが有効です。
コミュニケーションスキルと言っても一朝一夕で習得することは難しいため、1つずつ習得していきましょう。
伝えにくい本音をちゃんと伝えられるアサーティブ・コミュニケーションや、部下を思考を導くコーチングなど、まずは意識して利用してみ始めましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
イクボスとはどういうものか、どうしたらイクボスになれるのか、などがイメージついたでしょうか。
言うは易く行うは難しですが、時間をかければ必ず組織は良い方向へ変わっていきます。
イクボスと関係性の高い、ダイバーシティ・マネジメントと呼ばれる、個人が生産性高く働けるようにする個人のキャパシティの最大化マネジメントの研修を弊社は行なっています。
ご興味ある方は、ぜひ一度ダイバーシティ・マネジメントの実践BOOKをご覧ください。
成長企業における採用ブランディング・採用マーケティングを専門とし過去2年で50社以上を直接支援。前職では、月間150万利用者数を超える医療・美容のWebサービスの事業責任者、兼経営陣として組織の成長を牽引。成長組織におけるOKRを利用した評価制度の構築や外国人、ジェネレーション、女性、LGBTQ+などのダイバーシティ・マネジメントに尽力。