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シリーズAの採用・HR戦略【Incubate FundのHR支援】

2021.12.17

こんにちは、株式会社hypexです。スタートアップは立ち上げ当初は会社の認知や組織力もなく、採用に困ります。

そんな課題に対するヒントを探るべく、今回取材したのは400社以上のスタートアップへ投資活動を行うなど、創業前後のシードステージに特化したベンチャーキャピタルであるIncubate Fund(以下:インキュベイトファンド)。

VCとして、資金面での支援のみならず、採用を中心に出資先へのHR支援を行う中で、どのようにスタートアップの課題に寄り添い、乗り越えるのかを伺いました。

<壁谷 俊則氏・プロフィール>

2005年人材紹介事業を行うクライス&カンパニーに入社、企業経営の要となる「事業企画」「経営企画」「管理部門統括」等、マネジメント領域の転職支援に従事。2012年ランスタッド入社、キャリアコンサルタントのマネジメント業務を担当。2017年インキュベイトファンドに参画。投資先企業のHR支援を担当。

<寿松木 充氏・プロフィール>

新卒でキヤノン株式会社にエンジニアとして入社。株式会社リクルートキャリアでの経営企画職を経て、スローガン株式会社にてスタートアップ特化のエージェント事業の立ち上げに参画。2021年1月よりインキュベイトファンド株式会社へ入社し、タレントネットワークの構築・採用支援を通じた投資先のバリューアップを担当。

インキュベイトファンドの事業内容

――最初にインキュベイトファンドについて簡単に教えてください。

壁谷:インキュベイトファンドは2010年に設立した独立系のベンチャーキャピタルです。2021年で12年目になり、直近では9月に161億円規模のグロースファンドを設立しました。より成長性の高い企業様に投資させていただいており、ファンドの運用総額は780億円に達しています。

HR支援の部署を立ち上げたのは、私が入社した2017年の4月。部署といっても当初は私1人でした。(今となってはVCにHR担当がいることも増えてきたが)日本の投資企業で専任者を置いてHR支援に乗り出したのは非常に珍しい時期でした。

経営者の初期の課題は、会社が認知もされていない、組織力もないことです。そうなると最も課題となるのが採用なので、難易度が高い部分を支援させていただくことになりました。

――HR支援はどのあたりの成長フェーズがターゲットになるのでしょうか?

寿松木:主にシード期からシリーズA前後の投資先のHR支援をしています。シード期は外部から採用することが初めてで、そもそも「採用って何をすればいいのか分からない」といった課題があります。オペレーションフローの構築など内側から体制をつくっていく動き、それと同時に採用の母集団を作るのがシード期へのサポートです。

そこからフェーズが進んで自分たちで採用を回せるようになったとしても、より優秀なタレントを採用したいと要望があります。そこで、人材エージェントとの連携や自分たちが持っているタレントネットワークの活用を通してソーシング業務を行っています。

ただし、人材を紹介して終わり・体制をつくって終わりではなく、それを通じていかにエコシステム(複数の企業がパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら共存共栄していく仕組み)を作れるかを大事にしています。

今回の御社(hypex)との連携もそうで、スタートアップを支援するレイヤーの方と連携しながらで包括的な支援をすることを重要視しています。

Incubate FindのHR支援はシードからシリーズAに強い

ーインキュベイトファンドの採用支援について

――シード期やシリーズAの採用はどのようにしていくべきでしょうか?

寿松木:前提として採用に「べき論」はないと思っています。ケースバイケースであり、スタートアップ企業(および起業家)の特性、適正により異なるためです。

まずは、誰を採用するか?どのタイミングで採用するか?採用コストはいくらにするか?などの論点整理をするのが一番大切だと思います。

なんとなく採用活動をスタートする企業が多いですが、創業期の採用は組織や事業に与えるインパクトが大きいので、ちゃんと整理することが大切だと思います。

いろんなスタートアップに関わって感じるのは、Howの部分、どのように採用するかが多く飛び交っていることです。

変化の激しい採用市場でキーワードを挙げると、「候補者側の感情報酬を徹底的に考える」、それを「市場に認知してもらうこと」の2つが重要です。

採用するスタートアップ側の目線に立つと、こういう人が欲しい、これができる人が欲しいなどの要求ロジックがあります。では、その要求に応えられる人にとって、その会社に入社する理由を考えると必ずしも金銭的な報酬ではないケースが多い。より優秀な人と働けるワクワク感や、壮大なミッション、ビジネスを立ち上げられることにモチベートされる。いわゆる感情報酬が一番にくると思います。

その感情報酬を候補者に与えられるのかを採用する側が徹底的に考えなければいけないと思います。これは絶対に外してはいけない部分で、その言語化を曖昧にしたまま進めると採用は上手くいかないことが多いと感じます。

ただし、言語化できて対面で伝えられればOKでもありません。直近の採用マーケットはWebで色んな情報がオープンになっています。

自分たちはこんな想いで事業をやって、こんな人には共感できる、こんな人に来て欲しい、その代わり我々が提供できるのはこれですと、Webでオープンにして市場に認知してもらう動きはここ1、2年でとても活発 になっている感覚があります。

 要は、その感情報酬について市場からの認知を取ることが大事だと思っています。

Incubate Fund 寿松木充

――「感情報酬の市場認知」というキーワードは、めちゃくちゃ面白いですね。社内と社外の情報の非対称性をなくすることはよく聞きますが、感情報酬の市場認知を獲得する意識は初めて聞きました。

寿松木:弊社の投資先で採用が上手いと感じるのは、Web上で自分たちの組織課題、事業課題を書き出してオープンにしている企業です。そのことで候補者は、「この課題だったら自分も取り組みたい」と共感しやすかったり、「ここまで自社の情報をオープンにしているならば風通しも良さそう」と思ってもらえやすいからです。そういう認知が取れてくると採用は強いと思います。

事業課題やどんな社員がいるのかは分かりやすい情報ですが、その他にも採用市場のなかでどの情報をどう出せば感情報酬を提供できるのか、それがきちんと伝わるのかを徹底的に考えることが基本です。優秀な人と働くことにワクワクを感じる人もいれば、事業の課題にワクワク感を覚える人もいるので、徹底的に考え抜くことですね。採用におけるバリュープロポジションと言い換えてもいいでしょう。

その上で、情報の出し方や伝え方のニュアンスもすごく大事です。例えば社員が20人いるとして、20人全員が同じ文脈で経営者の言葉を語れるか?その統一感や温度感、テイストも重要です。

以前、エンジニアの方に転職のインタビューしたときは、「気になっている会社の社員のTwitterのリストを作って比べてみたら、みんなちゃんと同じテンションでツイートをしていて、統一感があったから転職を決めた」とおっしゃっていました。純粋にコンテンツだけの問題じゃないんですね。

――その他、スタートアップの採用を支援する中で大事にしていることはありますか?

Incubate Fund 壁谷 俊則

壁谷:シード期の採用の場合は、事業成長を一緒に考えてくれる人を採用すべきだと思っています。事業がたどり着きたい未来を一緒に考えていける人かどうかは大事です。

シード期は会社が常にハッピーな状態ではない、ハード・シングス(きつい試練)を乗り越えていかないといけない時期でもあります。そういう点から言えば、ただ事業にワクワクしているだけの人ではだめで、シード期のハードシングスを一緒に乗り越えて行ける方であるかはとても重要です。苦労を乗り越えていくことも含めてワクワク感を持てる人、自らが主体性を持って事業成長に貢献してくれる人かどうかはシード期の採用では大切なポイントだと思います。無くなれば逃げてしまう。

時として、採用においては10人前後の会社が一気に20〜30人と採用できちゃうケースもあります。そうすると採用ってめちゃくちゃ楽しくて、会社としてもイケてる感じに思えてしまう。でも事業は常に試練があるので、何かの節目で変わってしまいます。昨今のコロナもその一つです。

予想できないことが起こったときに、ぐっと耐えてさらに力をつける会社と、分解してしまう会社があります。なので、ハード・シングスに耐えうる骨太の人材を獲ること、頑張り切れる人物か、頑張り切った過去があるかの確認は面接のコニュニケーションの中で取らないといけないですね。

アトラクトとアセスメント(見極める)のバランスがすごく難しいと思います。アセスメントばかりやっているとテンションは下がり、ヨイショばかりやっていると見極めができなくなる。肝心なときに耐えきれない。

だからこそ経営者がしっかり採用にコミットしないといけないんです。採用のリソースが足りないからではなく、強い組織をつくるため、事業困難に向き合っているチームをつくるためには、時には社長がお腹(弱み)を見せて「手伝ってほしい」と伝える。

候補者に自分のポジションや待遇にコミットしてもらうのではなく、マーケット未来・事業の成長をしっかり感じとってもらってコミットしてもらうことが特にシード期における採用では重要だと考えています。

戦術的に打てる手は沢山ありますが、軸をブラさずにやり切ることが非常に難しい。だからこそ我々のうような伴走者が必要だと思います。

――ではスタートアップの伴走者としてどのような支援をされているか改めてお聞きしたいと思います。

寿松木:「立ち上げ支援 」「タレント紹介」「採用広報」の3つに分けて話をします。

まず、「立ち上げ支援 」については、シードフェーズの起業家は採用は何から始めればいいか、面接における評価手法、雇用体系(正社員なのか業務委託を雇うべきかなど)、採用管理ツールをどう使うか?採用媒体は何を使うかなど、疑問が絶えません。

そういった小さい疑問でいちいちつまずかないよう、変な落とし穴にハマらないように、自社だけで採用業務を回せるようになるまでの基盤づくりを3ヶ月を目安にサポートさせていただきます。その後も事業インパクトのあるポジションには内側の人間として採用成功まで伴走します。

2つ目の「タレントの紹介」は、我々が持っているエージェントとしての機能と、人材エージェントとの連携の2パターンがあります。

我々が「タレントネットワーク」と呼んでいる色んなイベントやリファラルで接点を持った方、スカウト媒体を利用しながらキャンディデート(企業の条件に合った紹介の対象となる候補者)とキャリア面談 をします。その中で、スタートアップの初期からジョインしたいと合意ができれば、キャリアの指向性やこれまでの経験に沿った形で我々からベストな提案をします。

また、より多くの優秀な方に振り向いてもらうために業界を代表するエージェントとの連携も重要です。エージェントから「こういうステキな方がいるんですが、どこかおすすめの投資先はありますか?」と相談していただくことでキャンディデートとの接点の機会を創出もしています。

3つ目の「採用広報」は弊社のコミュニティチームと連携しながら「Hello」シリーズを始めとした様々なイベントを実施しています。

Incubate FundのHR支援
投資先企業チームへのタレント紹介と採用組織の立ち上げ支援、また採用広報。

他にも、いろんな相談、例えば人事制度づくりの相談を受けたときに支援をさせていただいたり、要は「なんでも相談してください」と、駆け込み寺のようなお困りごと相談も受けています。

壁谷:とにかくHR版のスタートアップエコシステムを提供させていただくことを意識しています。

スタートアップに優秀な人材をご紹介してくださるエージェントは昔に比べてだいぶ増えてきました。また、フリーランスや副業・兼業人材の紹介・マッチングサービスも増えて質も高まってきています。スタートアップ企業の成長をわかってくださる方々に、我々の投資先の企業を認知していただき、企業の魅力を知っていただくために我々はプラットフォームとしてしっかり伝えていく役割があります。

インキュベイトファンドのHR部門の拡大よりも、投資先の企業の成長がまず一番に来ないといけません。我々のモットーである「起業家にとって最初で最大の応援団」として、そのためにできることを探し続けています。

さらに、個別でやっている採用立ち上げ支援の事例が出て来れば型化して、近い将来、同じ課題に向き合うだろう新規の投資先スタートアップに共有していく機会を増やしたいと思っています。

――それでは、これまでの成果について教えていただけますでしょうか?

寿松木:今年の下半期で我々が関わった支援で投資先の採用が55件生まれています。

投資先のCFO(最高財務責任者)候補の採用が決まったケースもあれば、代表1人しかいないタイミングで1人目のエンジニアの入社が決まったなど、事業に大きいインパクトのある支援をさせていただく成果は出てきました。

――採用された方は何歳くらいの方が多いのでしょうか?

寿松木:特定の年齢層に偏ることはないですが、20代後半から30代中盤が多いですね。我々が関わろうとするのは基本的に即戦力層なので、20代前半でポテンシャル層の方は少ない気がします。前職で成果を出した上で、スタートアップの経営の中枢にジョインする挑戦を希望される方などが多いです。

――では、採用広報での取り組みをもう少し詳しく教えてください。

寿松木:メインでは2つです。先ほど述べた「Hello」シリーズが1つ。これは投資先にイベントに登壇いただいて認知を獲得していく取り組みです。

Incubate FundのHelloシリーズ
Hello, ROBOTICS
Hello, FINTECH
Hello, Internship
Hello, OUR NEXT CXO
Hello, HEALTHTECH
Hello, NEW PROJECT

もう1つが、FastGrowというスタートアップ向けのメディアと連携して、月に1度、 オンラインでのピッチイベント(会社説明のプレゼンを行うこと)をインキュベイトファンドの投資先特集としてやらせていただいています。そこに2社登壇してもらい、私も混ざって人・組織に関するテーマを深掘りして話をします。

ただし、単にイベントを開いて認知を獲得するためではなく、投資先がどんな認知を獲得したいのかを考えて開催しています。一度、取りたくない認知を獲得してしまうと払拭が難しいので、シード期だからこそセンシティブにやっています。

スタートアップは現状はまだまだでも、未来に魅力があります。その魅力的な未来を我々が知っていなければ、きちんとした場の設計はできません。その理解を深めることは重要視しています。

実際のスタートアップについて

今回、実際にインキュベイトファンドのHR支援を受けている会社に実際にインタビューをしました。1社が株式会社Skillnote、もう一社がアスエネ株式会社です。

株式会社Skillnote

――会社とサービスについて簡単に教えてください。

山川:製造業の現場で使われるスキルと教育を管理する管理するためのクラウドサービス「Skillnote」を提供する会社になります。

ビジョンとしては、「つくる人が、いきる世界へ」を掲げ、製造業で働く全ての人がイキイキと成長実感を持ちながら活躍できる世界を目指しています。

――インキュベイトファンドとは、どのような採用に取り組まれているでしょうか?

高田:基本的にはCXO以上の経営レイヤー・事業部長以上のハイレイヤーの採用において支援を頂いています。さらに採用活動全般、組織開発、人事制度、人事業務全般もアドバイスいただいています。

――具体的な取り組みを教えていただけますでしょうか?

高田:人事周りを担当している私と三浦の2名とも人事未経験でスタートしたので、何から始めるべきか、何をするべきかをゼロからアドバイスいただいています。

採用に関してはハイレイヤーのキャンディデートのご紹介やハイレイヤーに強いエージェントの紹介、エージェント向けの説明会を企画いただいて、そこを経由して魅力的な方を累計すると数十人は紹介していただいてます。

――その中から何人か採用されたのでしょうか?

高田:まだ入社までは行っていないのですが、母集団は形成できているので、いずれ採用のタイミングが来ると思っています。

また、インキュベイトファンドさんの紹介で、一緒に取り組むエージェントも10社くらいから約30社に増えています。しかも、ただ紹介してくださるだけじゃなく、VCから見た我々の魅力もエージェントに伝えてくださっているので、応募にも繋がりやすくなっています。

――御社のご担当は寿松木さんがされているのでしょうか?

高田:定例会にて全体施策の相談を寿松木さんに、エージェントさん向けの説明会や個別の紹介は壁谷さんにサポートいただいています。実は、私も壁谷さんの紹介でSKILL NOTEに入社しました。

――今後の御社の取り組みや、スタートアップの採用で意識される点を教えていただけますでしょうか?

高田:今、弊社ではPMF(提供しているサービスや商品が、顧客・市場に受け入れられている状態)は達成でき、次のスケーリング(規模の拡大)を一緒に引っ張っていただけるメンバーを募集しています。その体制が決まると一気にスケーリングに受けて投資していくことになります。

そうなると、採用だけではなく組織づくりやミッション・バリューの浸透の比重が高まっていきます。

現在は20、30人の組織なので、ミッション・バリューの浸透ができていますが、今後は課題になってくると考えています。

三浦:私も高田も人事未経験でスタートしたのですが、Incubate Fundさんのほうから成功している他社の事例や寿松木さんの考えを共有いただけるので、自信を持って取り組めるようになっています。

高田:定例会で相談することもできますが、困っていることもチャットでライトに相談できるので、ガッチリしたサポートや細かいサポートも助けられています。

Incubate FundのHR支援
株式会社Skillnote
支援内容
・CxO・事業部長採用
・採用活動全般
・組織開発
・人事制度

成果
・連携エージェント数300%Up
・母集団形成
・人事担当の採用

代表インタビュー

アスエネ株式会社

――会社とサービスについて簡単に教えてください。

西和田:2019年10月に設立した会社で3期目に入りました。BtoBの法人向けに特化した事業で、1つ目はCO2排出量ゼロの地産地消・コスト削減もできるクリーン電力の販売です。

2つ目が今年の夏にリリースしたばかりのCO2排出量の見える化のクラウドサービス『アスゼロ』を手がけています。

――インキュベイトファンドとは、どのような採用に取り組まれているでしょうか?

西和田:2019年に、インキュベイトファンドさんから出資を受けて、HRに積極的に取り組み始めたのが去年の10月くらいからです。

私自身、採用の経験は面接しかなかったので、どんな観点で採用すべきかなど、寿松木さんに週次で我々の採用状況を伝えて壁打ちになっていただいています。どんな採用媒体を使うと良いか、返事が返ってきやすいスカウトメールの打ち方などを教えていただいています。

インキュベイトファンドさんは様々なスタートアップを見られているので、フェーズごとにやるべきことのアドバイスが的確で助かっています。ダイレクトリクルーティングなら、どんなサイトが有効かなど。

また、我々1社のためだけにエージェント説明会も開いていただいて、20社くらいのエージェントさんにピッチをします。1社1社と話すのではなく、まとめて説明できるので非常に助かります。しかも、自社で抱えている人材を繋げていただいています。

大西:私はスタートアップとは無縁の企業で働いた経験しかなく、情報リテラシーもなかったので、インキュベイトファンドさんの存在に助けられています。

筋のいい情報をピックアップして、私1人では咀嚼できない部分も理解できるように手伝ってくださいました。人事1人目で壁打ちの相手がいない中で、壁打ちになってくださったのが、とてもありがたいです。上司に相談するような内容も対応いただいているので助かります。

――スタートアップにおける採用で大切だと思うことを教えてください。

西和田:この2年間で退職者が出たときに感じたことですが、カルチャーフィット、バリューフィットが重要だと思います。特にスタートアップは、どうしても人材が欲しいポジションがあり、すぐに採用したいと思ってしまいます。

当時は会社を立ち上げたばかりで、我々もバリューなどを定義していませんでした。採用の際に我々の価値観を伝えて共感してもらえばハッピーでしたが、結果的にお互い不幸になってしまったんです。

現在では、9つのバリューを面接で説明して一番共感できるところと、一番共感できない部分を教えてもらうようにしています。採用のミスマッチは起きにくいので、大切にしています。

インキュベイトファンドさんには、退職をお願いする社員への話し方や、退職をお願いするべきか、それとも残ってもらったほうがいいのか会社として肝となる部分の判断もアドバイスいただけて助かっています。

Incubate FundのHR支援
アスネス株式会社
支援内容
・採用基準の策定
・採用媒体の選定
・スカウトメールブラッシュアップ
・エージェントピッチ

成果
・社内HRノウハウの0→1
・バリュー採用の立ち上げ
・人事労務の強化

代表インタビュー

ーインキュベイトファンドの将来

――これからHRの部分でもっとこうしていきたいといった将来像はありますか?

壁谷:これから次のフィールドに出ていこうとする挑戦者たちの出発点(誰よりも先に相談する先)という場にしていきたいですね。自ら社会に寄与したいと考えている方々が集まり、繋がるプラットフォームとしての機能を身につけていきたいです。

インハウスのエージェント機能も持ってはおりますが、単に紹介可能な人のデータベースを拡充するだけではあまりに労働集約で、やる意味がありません。

Incubate Fund
壁谷 俊則
寿松木 充

――プラットフォームの機能とは、マッチングみたいなイメージでしょうか?

壁谷:基本はそうですね。ただし、人材紹介としてだけのマッチングではありません。どういう機能が備われば十分なのかは我々も現在進行形で模索しているところですが、エコシステムに近いものをイメージしています。

これまで採用の話ばかりしましたが、HRという複雑性の高いテーマのにおいて採用以外の支援も必要で、すべては連携して繋がりができると考えています。スタートアップ組織のあり方や、その中での雇用のあり方など、新しいスタンダードを考えていくシンクタンクとしての機能なども作り上げていきたいと思います。

寿松木:我々の考えるプラットフォームは、誰が何かを発信する一方通行ではなく、起業家を含めた挑戦者たちが目の前の課題解決のために真っ先に相談でき、解決に向かうことのできる場所です。

スタートアップの個別の困りごとを解決していく支援の機能は武器として持ちつつ、スタートアップのインサイダーとして認知や信頼を獲得しながら、プラットフォームを充実させていきたいです。その中で我々ができることとしては、これから生まれるスタートアップが変な落とし穴にハマらないように、組織作りの観点から提言していくことかなと。

壁谷:そのためにやらないといけないことが多いです。我々は単に転職者のデータベースを作りたいのではなく、投資先の社長やCXOも巻き込みながら、挑戦者たちがVCと連携して、新しいものを作っていけるような仕組みを作っていきたいと考えます。

また、個人的な想いの話になりますが、現在、スタートアップではインターン生が活躍するようになっています。インターンという場があることで、志ある若い方と若い経営者の接点ができ、そこから新しいものが生まれてくるようになりました。それでもまだベンチャーキャピタルって起業家だけが会える世界ですよね。けど、ゆくゆくは自分の子供が大きくなったときに、新しいことにチャレンジするときはVCに気軽に相談に行けるような状態にしたいですね。

インキュベイトファンドも社会を活性化するための大きなハブとしてのプラットフォームになりたいと思っています。これは会社としての考えより、私個人の願いではありますが。

そのように、こうなるといいなという理想の「富士山の頂上」は見えているけど、現実的な登り方は難しい。近づけば近づくほど難しいと感じます。

我々は(VCHRの立ち位置からは)単なる紹介以上の価値や仕組みを世の中に提供できると思っています。それを一緒にやってくれる仲間も増やしたいです。

我々の事業の成果として、半期で55件の採用をしたと言いましたが、これからは、それを成果と言っていいのか疑問でもあります。本当に大切なことは、投資先自身に採用力をつけてもらうことです。

マッチングとして我々が採用しても、半年後に辞めてしまったら意味がありません。今後は投資先に採用力・組織力があるかが我々の成果になってくると思います。

――本日はありがとうございました!